前田幸長の野球人生に密着

才能を開花させた「独学」と「師との出会い」

元プロ野球選手であり、現在は都筑中央ボーイズの会長を務める前田幸長氏。
彼の野球人生を紐解く第2話では、中学時代からプロ入りまでの知られざる歩みが赤裸々に語られました。

前田氏の中学時代は、一般的な野球少年とは大きく異なる環境でした。
当時を振り返り、「ほぼほぼ指導者はいなかった」と明かします。
指導者が不在の中で、前田氏は自らの感覚だけを頼りに、ひたすら野球と向き合いました。

「カーブが良かったっていうことはあるでしょうね。まっすぐならビックリするほど速くはないと思うんですよ。自分では速いつもりでしたけど」と、当時の自身の投球を分析します。
配球についても「正直覚えてない」と語るように、教科書通りのセオリーよりも、その場の状況と自らの感覚を信じていたことが伺えます。
この型破りな独学こそが、強豪校の打者を抑え込む礎となっていったのです。

福岡第一高校に進学後も、前田氏のプロへの渇望は尽きることがありませんでした。
寮の裏で毎日1000回のシャドーピッチングを課し、「自分が決めたのでやるしかなかった」と、その人並み外れた練習量を明かします。
集団練習よりも「自分がどうやったら上手くなるか。それしか考えてなかった」と語る言葉には、プロを目指す者の覚悟がにじみ出ていました。

「全体の練習は当然ある。でも自分を伸ばすのは個人練習。やるのは本人だからね」
この言葉は、指導者となった今も、若い選手たちに伝え続けている重要なメッセージです。

そんな前田氏に大きな転機が訪れたのは、高校1年の秋冬に出会った師匠、稲垣人司氏の存在でした。

「師匠に教わって初めてスイッチが入った。プロで長くやれたのは師匠との出会いがなければ難しかった」と、熱く語る前田氏。
師匠から叩き込まれたトレーニングを毎日続けた結果、2年生の秋には「投げりゃ負けない」「自分の中では無敵」と、圧倒的な自信を持つまでに成長しました。

「自分が一番上手いよねって思ってなかったらこうはなれなかった」という言葉は、自己肯定感の強さが彼の大きな原動力であったことを物語っています。

甲子園では春夏2回出場し、最後の夏は決勝まで勝ち進むも、広島商業に1-0で惜敗し準優勝に終わりました。
「途中は“勝ちたい”とも思っていなかったのに、最後は“このメンバーで優勝して締めたい”と思った」と、前田氏の言葉には、チームへの深い思いと勝利への本音が垣間見えました。

前田氏は自身の野球哲学を語りました。「自分が一番下手だと思えと言う人も多い。
でも僕は何があっても“自分が一番だ”と信じて疑わなかった」と、独自の信念を貫き通した彼の言葉は、多くの野球選手に響くことでしょう。

そして、「決めたことはやり続けた。やっぱりやれるかどうかは本人次第」というメッセージで締めくくられました。
この言葉は、単なる野球論を超え、人生を豊かにするための普遍的な真理を示しているようにも思えます。

次回、第3話では、前田氏がプロの世界へ入るドラフトの裏側やロッテ時代の苦悩と決断について迫ります。

第三話に続く＞＞＞